万里小路メンバーの過去原稿

2002-12-29「妄想」特集にあたって

妄想」特集にあたって 23:20

 今回、『サブカル評論』でははじめて特集を企画した。

 テーマの「妄想」は執筆者各人によって捉え方が異なり、全体として大きな広がりを持ったものになったと思う。が、一方でいろんな意味で痛い企画になったことも確かである。その点についてはあらかじめ謝罪しておきたい。ごめんなさい。

 我々は日常「常識」なかで生きている。しかしその「常識」は貴方以外の人にとっても「常識」なのだろうか? もしかすると貴方の「常識」は貴方だけの「常識」、つまりは妄想なのではないだろうか? それは究極的には不可知の領域に属することだろう。このたびの特集に記事を寄せられた近藤氏はその中で「共同妄想」について述べている。個人の妄想だけではなく、集団にとっての妄想というのも一つの捉え方だろう。また真木氏は天地創造の妄想性にも言及している。キリスト教世界観では人は他者の妄想の中で暮らしているということもできる。イギリス幻想文学ロード・ダンセイニはその著書『ペガーナの神々』のなかで世界は神の夢の中の存在であるという神話世界を描いた。そのような妄想観は何も欧州に限ったことではなく、東洋でも「邯鄲の夢」のような話がある。

 我々近代人は目先の「常識」なるものに囚われ、妄想という豊かな世界をどこかに置き忘れてきたような気がしてならない。今回の企画が私たちの目の前にあるそのような豊かな世界を取り戻す一助になれば幸いである。全く役に立ちそうもないが。

(初出『サブカル評論』第3号 2002年12月29日発行)