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松原メンバーの過去原稿

2003-12-3003年、サブカル?ニュース川柳

もの狂ひ、にほんごであそぼ 22:05

生まれてこのかた観たライヴは数々あれど、短くて盛り上がり、大爆笑だったベストワンは、靖国神社夜桜能」での狂言「ふくろう山伏」である。

ふくろうに取り憑かれた弟のために、兄が神通力を持つ山伏を呼んでお払いをしようとするのだが、登場する山伏舞台に現れた瞬間からもう、ヤバイのである。

目がイッちゃってる。

電波系だ。

足を動かしているのに一歩も進んでいない。

こんな怪しい山伏にふくろうが払えるわけもなく、やがては兄や山伏本人までも取り憑かれ、三人三様、ホッホ~!!などとわめきながら舞台で暴れまわる、壮絶な狂言である。 これを見て狂言師とは、なんと特殊な商売であろうかと思ったものだ。

家業を継いで幼いころより熟練の「狂態」をさらし、客がそれを見て喜ぶのである。

 そんな「狂態」の楽しさ(!)を紹介する子供番組が「にほんごであそぼ」(ETV)だ。

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最初に見た時には「言葉遊び」を入口として、「ひらがな・カタカナ」「名詞」を覚えていくようなものなのかと思ったが、そうではないのである。

にほんごであそぼ」はことばに親しみ、伝統芸能ごっこで遊ぶことを目的とした番組であるらしい。

にほんごであそぼ」には、祖ともいうべき番組英語であそぼ」がある。この二つを比較すると特徴が浮かびあがるのだが、まず、「英語であそぼ」は、遊ぶためではなく、歌や寸劇を通じて英語を覚えるための番組である。

ここで、「英語~」を全く観ていない方のために

番組に内容について説明しよう。

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初代「英語であそぼ」は、登場人物たちの寸劇を通じて英語に親しむという構成だったが、お姉さんに色気がありすぎ、出演する着ぐるみに統一感がなく、英語部分日本語部分住み分け曖昧というどうにも気持ちの悪いものであった。

その後、クロードチアリの娘クリステルと、現在「夢りんりん丸」のメインMCを勤める戸田ダリオバトンタッチクリスは好演したと思うが、やはり番組全体に「日本人が演じる外国」的違和感があったのは否めなかった。

そして、次の「愉快なラプトーン一家」シリーズで、番組は飛躍的な発展・安定を見せる。メインMCは表情豊かな着ぐるみのJ.B.(ジェイ・ビー)アメリカ系のパパ台湾系のママ、混血の少女と、クリーチャーマペット達の世界。(ようするに、セサミ・ストリート文法なのだが)このような設定のなかで英語日本語自然にミックスされ、日本子供たちが番組に馴染めるよう、こどもとバス停やりとりバス停くん」、ギターを持ったエリックが各地で子供と交流を持ってロケをする「Hi!Eric」と、申し分のない構成であった。現在はJ.Bとエリックが中心となった番組となっている。

にほんごであそぼ」では、番組を構成する設定はあるかもしれないが紹介はない。ただいきなり演技が始まる。取り上げられるのは、かるた・落語文学のなかの「意味のない変ないい回し」ばかりである。狂言でもまず見せられるのは、面を使ったれっきとした演目「神鳴」(かみなり)であった。児童文化的見地から見て、神鳴の面は最も幼稚園ぐらいの子供の鑑賞に適さないと思う。

大人が見ても恐いと感じる程の異形で、これは「なまはげ」と同じく戒め用に使用するべきものである。(個人的には「なまはげ」は絶対にトラウマになると思うので反対だが)番組ではそれを、蝶ネクタイストライプスーツをきた野村万斎と子供映像をはさみ込み、この人物が演技していることを強調して、うまく誤魔化している。

「ヒッカ~リ!ガラガラガラガラ

スーツでこれをやられると脱力するが、狂言はこのようにばかばかしいことば遊びの宝庫であり、子供たちに人気の「ややこしや~」は、「間違いの狂言」という新作狂言である。

NHK 「にほんごであそぼ」 ややこしや編

NHK 「にほんごであそぼ」 ややこしや編

では「ややこしや」の次には何が取り上げられるのだろうか。デパートCMでやっていた「千鳥」の「チリチリ~ヤ~チ~リチリ~」もいいし(これもたしか万斎が出演していた)

「でんでんムシムシ!」と絶叫する「蝸牛(かぎゅう)」、きのこになりきってピョコピョコ動く「菌(くさびら)」なども良い。

キャプテン翼」で育った子供Jリーグを志望したように、「にほんごであそぼ」で育った子供

伝統芸能に殺到する日が来るかもしれないぞ。

能・狂言世襲性だから無理でも、落語講談には希望が見いだせるかもしれない!?



(初出『サブカル評論』第5号、2003年12月 )