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松原メンバーの過去原稿

2006-12-31

miyurin20061231

女性向け エロ・マンガのゲンバ 12:33

 今回の特集は「エロ」という事なので、女性マンガ市場に絢爛に咲き乱れたる「エロマンガ」の現状を報告したいと思う。尚、本稿執筆にあたり、実際にエロマンガジャンルで作家活動をしている友人や、エロゲームのシノプシスを書いている友人に取材を試みようとも考えたが、作り手の意向よりも、消費されている作品と対峙して読み取れるものを書きたいと思い、これはやめにした。

性描写主体のエロマンガとしての次世代レディコミが登場したのは八五年、現在もこのジャンルの中心的出版社である笠倉出版の「La comic」(現休刊)、祥伝社「FEEL」(現休刊)等であった。

以降、セックスそのものが主体であり、読者が女性に限定される女性向けエロマンガは、月間なんと22冊前後もの雑誌が発行されているのであった。

それでは、これらの雑誌の作品・描き手はどのようになっているのだろうか。

今回は

笠倉出版「プチ」

セブン新社「イフ」

宙出版「アヤ」

をサンプルとして検証していこうと思う。

・笠倉出版「プチ」

表紙 神葉理世(エロマンガの描き手は、AV、風俗、そして宝塚歌劇の芸名と同じく

非現実的な名前が多い。この傾向はボーイズものにも見れる)

表紙絵柄 山盛りのフルーツに埋もれている半裸の女が、もの欲しげに林檎を齧ろうとしてる。白い髪、緑の瞳、赤いヘアバンド…レディースコミックというと大人の、怖い顔をした馬ヅラ系の絵を思い浮かべるかもしれないが、そんな事はなく、かなりかわいい絵柄である) 

アオリ(表紙文字) 「おもいっきりCUTE&H!シゲキ的恋愛マガジン」

「灼けつくカラダ 真夏のLOVE&H 夏恋来いスペシャル」

他に文字は作家の名前のみ。作品タイトルの表記は一切無しである。

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巻頭カラー 紫賀サヲリ 「エキセントリックラバー」


エロマンガ雑誌の場合「巻頭カラーを取っている作家」が一番画力を持つ場合が多い。雑誌がうしろになればなるほど、というか二本目からさっそく、絵が下手である。

ストーリーマンガならば「個性」で読みとおす事ができるが、エロマンガの場合絵が下手だと「何をしているのか」よくわからないので、致命傷である。

この号の「プチ」は、紫賀サヲリ以外はお話にならなかった。紫賀は、話の展開には無理があるが、カラーページからヌードシーンを描いており、なかなかにポイントが高い。

話を「エキセントリック~」に戻そう。

なんと、カラー1ページ目から挿入シーンである。

十代と思われる二人がベッドの上で行為に及び

「や…だめっ、智輝くんもお…ふあああっ」(ぐちゅ)

と泣いている。

女は「ふああ」などと言って本気で感じ、泣いているが、男はポーカーフェイスである。

(この女が本気で感じ、男がポーカーフェイスというのは、このジャンルの重要なお約束である。行為に及ぶ二人ともが没頭していると、読者が投影する隙ができないからであろうか)

カラーは4ページあり、タイトルページの見返し部分は全身ヌードでからむ二人が描かれ、主人公のモノローグが始まる。

「私 美羽吉乃と 彼野崎智輝は 俗にいうセフレというやつです…ああああ」

(びく びくん)




しかし、次のページからはいたってフツーの少女漫画的なシーンが展開する。

「セフレ」だった二人が本当の恋仲になっていくストーリー。冒頭からセックスしているのだがキスはしていない。

本当の恋人になってはじめて二人はキスを交わし、乳房も愛撫する。このパターンも重要で、エロマンガは総ページ30ページ中セックスシーンが10ページ、たいてい最初は挿入、二人のエピソード、恋仲になってからキス、乳もみ、指入れ、秘部見せ、クンニ、バックというコースである。普通の行為とは逆だと思いますが…。(美しい表現を目指したのですが、こんなん書いてすいません、すいません)

担当編集者が作画者に「で、ここで、挿入とみせかけてクンニにいき、「だめ…そこだめえ!!」とか言わせてくださいよ!」などと指示し、言われた作画者が真剣にメモっているさまが目に浮かぶようである。

・セブン新社 「イフ」

表紙 杉本ふぁりな

表紙絵柄 「プチ」と同じではないか!と思う、緑の瞳の女がまたまたもの欲しげな視線をこちらに向けている。

脱いだ赤い紐つきサンダルを手にしているが、「赤いものをもて遊ぶ」というところもまったく同じである。

アオリ文字 「もえちゃう・恋体験・いっぱい」

「誰にも言えない禁断の関係」

「ひそやかに濡れる真夏の恋」

文字のオンパレードであるが、あとは作家の名前だけ。作品タイトルは無い。

そしてこちらのカラーページは、「読者プレゼント」のみかえしはなんと「別冊の予告」であった。同じく杉本ふぁりなによる、「緑の瞳の女がもの欲しそうな視線で…」以下、略!

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巻頭カラー作品は真條りの「恋は痛く あまく」。

こちらはヌードではなく普通の少女マンガ風。次のページは、紙がアート紙っぽいカラー仕様であるのに、まさかの一色原稿であった。どれだけお金かけてない雑誌なのだ!!

エッチ開始は6Pまで待つ。主人公・奈美は前の彼と別れて以来、同級生のホスト・桐野くんと同棲している。

「私には 彼氏じゃないけど エッチする相手はいる…同級生の桐野くん。職業ホスト」

桐野「そろそろ付き合ってよ美奈ちゃん」

奈美「ヤダ。いつも言ってるでしょ私ホストやってるような人イヤだって」

桐野「本当にイヤなら拒んでよ…俺のこと」

奈美「あ…」

付き合わない、と言っておきながらいきなり挿入許可である。

桐野「俺のことどう思ってんの?答えて美奈…」

奈美「ああっ、そんなに(指を)動かさないで…っこんなふうに焦らされたら…」

結局桐野はホストをやめ、ハッピーエンドに…って、これぞヤマなし、意味なし、オチなし、エッチありのしょーもないマンガである。が、絵はなかなかに上手かった。



この雑誌、表紙と真條りの以外は本当に上手くなく、話もつまらなかったが、ある特徴があった。

男性キャラの名前が、「亮太」「颯太」など、「太」がつく名が多かったのである。

これは、あまり頭のよくなさそうな…温かみのある名前だからかと思っていたが、ひょっとして「太い」という事を暗示する為だろうか…まっ!お下品ね!考えすぎ、考えすぎ!

・宙(そら)出版「アヤ」

表紙 ふみづき杏美

表紙絵柄 男女が見つめあっている顔のアップ。実はこの号はクリスマス時期に購入したので、前出の二冊とは時期が違う。この時期の別の雑誌の広告を見てみると…。

げっ、また杉本ふぁりながみつめあうカップルの絵を描いていた。表紙絵柄協定でもあるのだろうか。

アオリ文字 2007年 メロメロHがイイんじゃない?

この雑誌は、一般の少女マンガと同じく、「作品名・作家名」表記であった。

そして、描き手もみな上手で、バランスがよかった。元祖レディースコミックの流れをくむ正統派エロマンガ雑誌といえるかもしれない。


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平均的に上手かったので、今回は巻頭カラー作品ではなく、中ほどにあった松藤純子「ロマンスの神様」を取り上げる。

画風は酒井美羽に似ているが、たいへんに画力のある作家だと思った。

こちらも一ページ目は挿入シーンであるが、とにかく上手い。

前出の紫賀サオリ、真條りのらの絵は、子供っぽすぎず、色気むんむんでもなく、極端に巨乳でもなく上手いのだが、「挿入シーン」となるとからきし、駄目なのである。

紫賀はまさかの小コマ処理、真條はモノローグ重視で、絵に大きな写植をかぶせてごまかしており、それぞれ一回のみだ。が、松藤は大きなコマ割りで魅せる。全編34ページ中、セックスシーンは3回あるのだが、1回目1ページ、2回目5ページ、最後3回目は6ページにわたって描かれている。



冒頭、「あ~っ、嬉しい!大好きな彼が私の中に!もっと、もっとお…」と泣いてしまう美奈子。

これを元彼に淫乱だと吹聴され、性を楽しめなくなってしまう。そんな状態で新しく出会った洋介とも行為にいたるが、やはり自分を解放できない。やがて、二人は向き合う事ができ、真の喜びの頂点へ…。得意とみえて、挿入シーンは3回もあった。担当編集者が「先生はなんといってもファックシーンですよ!今回はクリスマス号ですし、3回イキましょう!ね」と言っているのが目に浮かぶ。

・貧困プレゼントの謎

そのほかの特徴としては、レディコミ・ティーンズものでまず目についたのが「懸賞プレゼントの安っぽさ」である。

商品は高いものなのかもしれないが、印刷の紙が安く写真がぞんざいなので、とっても貧乏くさく見えてしまう。

「プチ」では一等~三等バッグ(当選1名)、四・五等が財布(1名)、六等ヘア・アイロン(3名)、七等が香水(10名)だったが、一等のバッグはブランド物ではなく、どうみても四千円しないと思えるし、他の商品もイトーヨーカドーのワゴンで安売りしているようなものばかり。

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「イフ」では一等がやはりバッグ(1名)、こちらはルイ・ヴィトンであるが、デニム生地である。二等が財布(1名)、三等がトートバッグ(1名)。そして四等はパナソニックのデジカメ(3名)であった。普通、ノーブランドの手提げより、デジカメの方が当選したら嬉しいと思うのだが。さらに驚いた事に、五等はソニーのネットワークウォークマン(3名)である。エロマンガ大好きな読者はデジカメ・ウォークマンなど興味ないのだろうか。

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「アヤ」は、比較的ましで、一等ランジェリーセット(1名)である。作品とセレクト品にズレがなく、評価できる。


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まあどちらにしても、エロマンガをたのしみにしている女性はひととき楽しみたいだけ、

プレゼント懸賞に応募したりはしないのかもしれない。

さて、本稿のためにはじめて購入してみたこのエロマンガ(本当ですよ)、どうやって捨てよう…。

(初出『サブカル評論』第11号、2006年12月)

AzizAziz2012/04/10 22:09That's a posting full of iinsght!